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絵に描いた餅

「絵に描いた餅」と聞いたとき、餅の形はどんなふうに想像するだろう。

いちばん多いのは、お正月のお供えの段々重ねの餅だろうか。

ある人は長方形の切り餅を思うかもしれない。自分の好物のみたらし団子を考える人もいるだろう。おそらく形からすぐに餅とわかる、美味しそうな絵を描くだろう。中には何も描かずに、「餅の一部を表現しました」と言う人もいるかもしれない。

実は、これは私が描く餅の絵である。餅の輪郭は絵の外にある。「ふつうの餅は紙と同じ白色」という前提にして、このような絵を描いた。この場合、絵に描いた餅は、形がないとも言える。「絵に表現した」としながら、その形は見る人の想像に任せるという、不思議な絵になる。

一般に「絵に描いた餅」は、食べたくても食べることができない、すなわち役に立たない、現実のものでないこと、という意味で使われている。ここに一つ別の意味を加えて、「どうにでもなる存在」という定義はどうだろう?

自由自在になる、しかも形まで自由にできるもの。ふつう自由になるのは形以外のものだが、絵に描いた餅は、「その存在の輪郭さえ自由になる代表」として考えてみた。そのような具体例が他にあるのだろうか、と思われるかも知れないが、この餅は「万人が持っている餅」とも言えると思う。

絵からはみ出た輪郭は、一人一人が想像してよい部分である。

「それを毎日行いつつ、人は生きている」と言えないだろうか。