12.山吹の人 玉鬘

王朝時代の山吹は一重かなと思うのですが、八重山吹と出てきます

源氏物語の女性たちの多くは、いろいろな花や木によそえられています。

山吹という明るく華やかな花によそえられているのは玉鬘という女性です。女君たちに衣裳を贈る時、源氏は玉鬘には「山吹の花の細長」(表は赤みがかった黄色、裏は明るい黄色の着物)を選んだとあります。華やかな色合いの着物です。

六条院に引き取られて、源氏の庇護を受けていた玉鬘は、思いがけなく、髭黒という野暮な男に奪い去られます。彼女が居なくなった後、源氏は山吹の花を見て、玉鬘を恋い、独り言を言っています。

三月になりて、六条殿の御前の、藤、山吹のおもしろき夕ばえを見たまふにつけても、まづ見るかひありてゐたまへりし(玉鬘の)御さまのみおぼし出でらるれば、春の御前をうち捨てて、こなたにわたりて御覧ず。

呉竹の籬まがきに、(山吹が)わざとなう咲きかかりたるにほひ、いとおもしろし。「色に衣を」などのたまひて、「思はずに井手の中道隔つとも言はでぞ恋ふる山吹の花顔に見えつつ」などのたまふも、聞く人なし。(真木柱の巻)

玉鬘という人は、九州の片田舎育ちですが、乳母の教育が良かったのか、京に連れて来られても、見劣りしない娘でした。「わららかににぎははしく」ふるまう方とあります。

つまり、いつも明るく陽気な人だったようです。山吹の花にぴったりのイメージです。

八重の方が普通だったのかもしれません