人生100年時代に突入し、AIやITといった最新テクノロジーや多様化などによって複雑化していく問題に対処するためには「管理」を通じて得られるスキルが必要である。第一三共株式会社やファイザー株式会社、厚労省ベンチャーサポート事業のサポーターなどの経歴を持つ冠和宏氏が「管理」を通じてスキルを習得する方法を語っていく。
第二章 強い組織を作るために
組織には成熟ステージがある。あなたが所属したときには既に成熟しきっていて、過去に組織の成長を牽引してきた先達の試行錯誤の結晶が、いまではリソースを無駄に消費する仕組みになってしまっていることも多い。
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組織マネジメントと聞いて、どんなことを想像されるだろうか。バリバリ仕事をする課長や部長をイメージされるだろうか。組織の中の職位やタイトルがいくら立派でも、組織マネジメントが素晴らしいとは限らない。
ビジネスモデルが良いから業績が上がっているのかもしれないし、もしかしたらそのポジションはなくても組織活動は円滑に動くのかもしれない。一体彼らは何をしているのか考えたことがあるだろうか?
実際に根掘り葉掘り確認した経験のある方は少ないだろう。
あなたが組織を管理する立場だったら、ご自身で何をしているのかきちんとメンバーに説明できるだろうか?
できる方にはこのようなビジネス本は不要である。組織マネジメントが必要なのは、「効率良く、より高い成果を出すこと」が必要だからである。組織だけデカくして、よく考えずに分業を進めてしまうケースが後を絶たない。
単にデカくするのは簡単だし、分業を推進すると部門横断的な調整機能が弱くなるのが一般的である。組織マネジメントの究極の形は、結果を振り返って見て、組織化したことがポジティブに働いたことを説明できることであると考える。
つまり、何らかの目的がある、その目的に基づき、組織化した方が良いという判断があり、組織化されるのであって、組織化してから果たす目的を考えるわけではない。
普段の仕事が当たり前過ぎて、そんなことを考えたこともない人は少なくないと思う。何のために関係者を増やして、プロセスや業務工程を増やして物事をややこしくする必要があるのだろうか。
ご自身の組織を眺めてみて、組織化した理由と組織化がもたらしている社会的ベネフィットを説明することができるだろうか。
組織化の目的は、それぞれの人が個別に何かをやるよりも、メリットがあるからであり、組織の目的を果たすために機能的かつ効率的な場合に限り組織化を進める必要があると思う。
つまり、機能的だった、効率的だったということが説明できることが重要なのである。それが管理職や部長の成果なのである。「実行したこと」と「成果」との因果関係が重要なのである。
そのために組織の管理者やリーダーは何をすべきか。いくつかの本には組織マネジメントのテクニックのようなものが取り上げられているが、そんなに簡単に組織マネジメントができたら誰も困らない。
組織はすべてが別物であり、組織を構成する人も違うし、職種・業種も違えば、あらゆる意味でシチュエーションはバラバラなのである。従って、何かのテクニックで何とかできるようなものではないと考えるのが自然なのである。
組織を機能させるためには、小手先のテクニックではなく基本の理解が不可欠で、まず組織の特徴を理解することである。