猫座敷の裁判
「そういうものですか?」
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「そうです、遊びでもフェアにやらなければ。学ぶべき人はたくさんいたはずですぅ」
「はあ、どこに」
「いや、目の前というかあなたの相手です。遊んでたつもりかもしれませんが結構遊ばれてますよぉ」
「はい?」
「だから、違う側面から見るとです。彼女たち大体プロですよねぇ。ずいぶんご散財しましたねぇ~」
「金が目当てだったんですか? まあうすうす感づいていましたが、あの最後の二人もですか?」
メタタアコは自分を一瞥してからパラパラと資料をめくって言った。
「えーと、プロではありませんが、彼女たちは物欲ではなく知識欲が強かったんですね。最初に欲しかったのは知識です。でもそれにあなたがいろんなオプションをつけてアップグレードさせた。願ったりかなったりネギカモかもねカモーンでしょう~」
「まさか、そんな」
自分はがっくりと肩を落とした。
「それならなんで私はここにいるのですか?みんな幸せになったんでしょ」
「本来はねぇー。でも本物の愛もありました」
「ほほほ、本当ですか?」
「はい、でも気づいていませんでしたね、たぶん」
「誰なんです?」
「これから会っていただきます」
メタタアコが指さしたほうに扉があった。奥のほうにも三つ扉が見える。
「そのためにここにきたのですか?」
自分は言った。
「そうです。ただし本人ではありません」
「は?」
またややこしいことになってきた。メタタアコの視線がキッと厳しくなって滑舌もよくなっている。そのまなざしで、鼓動が何拍かとび、また考えるのが難しくなる。
「誰かを悲しませればその悲しみを共有する者が出てきます。その扉の奥には本人より悲しんでいる者がおります。今までのあなたにとっては取るに足らない小さなものでもあなたにしか救えません」
「なんです、それ?」
メタタアコは滑舌がよくなり声には凛とした張りさえ出てきた。