ファイル全体は大きな写真を寄せ集めたものになり、諜報共同体の上部管理者が買い手が脅威か評価する。その結果はしばしば白黒判定できず、CFIUSの課題として残ることもある。
その評価はCFIUSに代わり財務省へ届けられる。全委員会で更に検討した後、CFIUSは最終的勧告をホワイトハウスに送る。財務省は調整役として、しかもCFIUSの本部省庁として動くが、最終結論を言うわけではない。
決断はホワイトハウスが行う。各省庁のメンバーの意見としては通常同意を得ている。もし同意が得られていなければ、この案件は最終的に大統領による決断まで持って行かれる。
私のCFIUSとの関わりは2006年に始まるが、それはあの有名なドバイポートの大失敗のすぐ後のことだった。その取引とは中近東のある会社がアメリカ最大の港湾施設管理会社を買収しようとしたことだった。
その港湾施設はクルーズ船の管理だけでなく著しく多くのアメリカの食料、エネルギーの輸入と輸出の作業を行う。これらの港湾はアメリカの最も影響を受けやすく、決定的に重要なインフラを構成している。
買収提案の前は港湾はペニンシュラ・アンド・オリエンタル・スチーム・ナビゲーション会社(P&O)というイギリス企業で明らかに友好国の会社に保有されていた。
買収申し出のDPワールドはアラブ首長国連邦(UAE)の一部であるドバイ首長国に所有されており、ドバイの統治者ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームが管理していた。
争いの絶えない地域にあってUAEは諜報共同体からはアメリカの友好国と評価されていた。UAEはISISやシリアの非情なアサド政権とのアメリカのテロとの戦いにおいて積極的な同盟国だった。
DPワールドはこの取引がアメリカの国家安全保障の観点から問題があることを認識しており、2005年10月にその許可を得るためCFIUSにアプローチしてきた。港湾の安全管理を担当する諜報共同体の一員アメリカ沿岸警備隊情報部は懸念を表明した。
DPワールドはこの懸念に対し譲歩条件を持ち出した。すなわち企業統治の形態として、部門管理を進め、透明性を高めてガバナンスについての心配を取り除くという譲歩を示した。
譲歩条件の同意に基づき、CFIUSとホワイトハウスは買収にゴーサインを出した。
P&Oの株主は2006年2月港湾事業のDPワールドへの売却を承認した。