變(へん)に意識しているのはもしかして自分のほうではないかと、恥ずかしくなる。
そうだ、それに、「なかよし」とはついさっき自分から口に出していることではないか。
「私、清躬さんのこと、ほとんど知らないんです。おつきあいはしているけれども、清躬さんのことがちっともわかっていないんです。つきあう程にわからないことがおおくなります。きいて確かめたいとおもうけれども、なかなかきけないんです。少しわかってもわからないことがもっと増えてくるので、ますますきけなくなって──」
橘子は、棟方さんが清躬のことで淋しいおもいをしているのを感じた。小学校時代の友達にすぎない自分が「清躬くん」と親しげに呼ぶから、余計にそう感じられるのだろうとおもった。
といって、今更呼び方をかえるわけにはゆかないけれども。それにしても、部外者の自分が二人の現在の仲をきかされたって、どうしようがあるだろうとおもうのだったが、「なつかしいなあ」発言で自分からかかわりをつくってしまったことになるのかもしれない。
「かれの写真とかあります? 携帯のでもいいですけれど」橘子は今の清躬がどんな感じなのか、確かめてみたくなった。戀人だったら写真を携帯に入れているだろう。
「それが……」
棟方さんは逡巡(しゅんじゅん)した。なにごともすんなりゆかないひとだと、橘子は残念におもいつつ相手の対応を待った。少しして、棟方さんは小声で言いにくそうに言った。
「入れてないんです、清躬さんの写真、スマホには」
「あ、そうなの」
拍子抜けした。そういうものかしら、とおもいつつ、戀人なのに、と考えると妙なことのように感じる。戀人の写真を撮(と)っていないはずはないし、携帯とかスマホに入れてないなんておかしい。
携帯自体持っていない自分が言うのもなんだけど。
「あなたとツーショットの写真はあるでしょう?」
念のためにきく。本人がいくら写真嫌いでも、デートしたらカップルは普通写真を撮るものだ。
「いえ、御免なさい、そういうのもないんです」
申しわけなさそうに答える。
「ないものはしようがないわね。あれば、とおもったんだけど」
期待したのに当てがはずれて残念だ。戀人と言いつつ(といって、かの女の口から言ったことではないが)、二人の間に難しそうな事情があるのは察しがついているけれども、写真もないなんてどういうことなんだろう。
變(へん)すぎない?
橘子ははっとした。變すぎるとおもって、ストーカーが連想されたからだ。清躬は受け容(い)れていないのに、かの女が一方的におっかけてる?
ストーカーなら清躬の写真は撮っているだろうけど、隠し撮りだから、見せられる写真がない。