「沢田さん、聖徳太子の死後、彼の子孫はどうなりましたか。どんな役職に就いたか知っていますか」
「聖徳太子の子孫がどんな役職に就いたか、ですか? ええ? 聞いたことがないなあ。でも子供の山背大兄だったかな、その一族は殺されたんですよね」
「そのとおりです。よくご存じじゃありませんか。ただし『日本書紀』には、殺されたのではなく、自殺したと書かれていますがね。でもわたしは、いまいわれたように殺されたというのが真相ではないかと考えています。いずれにしても、山背大兄一族が滅亡したために、厩戸の血筋は途絶えてしまいました。つまり彼の血を継ぐ子供が一人もいなくなってしまったんです」
「ちょっと待ってください。なにか変だなあ」
沙也香が考えながら口を挟んだ。
「いま厩戸皇子について書かれた本を少しずつ読んでいるんですよ。それに書いてあったことですけど、彼の子供は何人もいたはずですね。山背大兄以外の子供はどうなったんですか。斑鳩に住んでいた上宮家一族は滅亡してしまったけど、別のところに住んでいた他の子たちもすべて殺されたわけじゃないでしょう」
「大鳥さんは、わざとぼくを困らせようとしていませんか」
口ほどではなく、磯部はにこにこ笑っている。