Slime Slime Slime
その夜。王は二人を豪華な食事でもてなすと、各自に広すぎるほどの立派な寝室を用意していた。タクは旅の疲れと、部屋に用意されていた美味い酒に酔い、すぐに寝入った。だがミコトは、何故か眠れずにいた。窓辺に腰掛け、静かに歌を口ずさんだ。美しく澄み切ったその歌声は城内に広がり、王の耳にまで届いていた。
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ミコトは歌い終わると、ラーの鏡を手に取り自分を映しだした。
「これが、本当の私の姿……。」
その瞳は何故か、とても悲し気だった。
王もまた一人、部屋で悲しみに暮れていた。ミコトの切ない歌声が心に響いていたのだ。遠い昔、どこかで聞いたことのある様な声だった。だが、もう王には思い出すことさえ出来なくなっていた。
ミコトが窓の外をぼんやりながめていると、何やら話し声が聞こえてきた。窓の下には男が二人、人目を避ける様に立っている。ミコトは二人に気付かれないように窓の下にしゃがみ込み、聞き耳をたてた。
「あのタクという男を……。」
いつしかミコトも眠りにつき、そして夜が明けた。