【人気記事】JALの機内で“ありがとう”という日本人はまずいない

Slime Slime Slime

(手遅れか……?)

タクは剣を抜いていた。だが、すでにその場所にミコトの姿はなかった。

モンスターでさえ、一瞬の出来事に何が起こったのか分かっていない。辺りからミコトの気配は完全に消えている。タクは素早くモンスターを倒すと、その場に呆然と立っていた。

「タクさ~ん、こっちこっち~。」

遠く離れた場所からミコトの声がする。声の聞こえた方へタクが走って行くと、ミコトはしゃがみ込んで四つ葉のクローバーを探していた。

「何やってるんだよ……。」

タクが心配そうに声をかけるとミコトは、タクの目の前に見つけたばかりの、もえぎ色のクローバーを差し出した。

「はい、これ。幸運のジンクス。」

ミコトはモンスターが襲いかかってきたことなど、気付きもしなかったかのように微笑んでいた。

タクにはその光景がとても不可解に思えてならない。あの時、確かにミコトはタクの目の前にいた。(なのに何故、一瞬でこんな離れた場所で、しかも四つ葉のクローバーを摘んでいるんだろう……?)

そう言えばもう一つ、不思議でならないことがある。ミコトはこれからモンスターと戦わなければいけないというのに、武器一つ持っていないのだろうか?

見た感じ、どこにも武器は見当たらない。それに、あまりにも身軽過ぎる。

「ミコト、君は武器を持っていないの?」

タクはミコトに率直に尋ねた。

「いいえ、ちゃんと持っていますよ。私の武器は、これです。」

そう言ってミコトが差し出した手の平の上には、小さな二つ折りのナイフがのっていた。

「えっ? ……こんなに小さいナイフが武器?」

不思議そうな顔をしているタクに、ミコトは微笑んだ。

「こんなに小さなナイフでも、急所を突けば簡単に敵を倒せるんですよ。」

ミコトはそう言いながら、タクの喉仏を人差し指でツンツンッと突っついた。

(……確かにミコトの言うとおりだ。それにミコトの小さい体じゃ、大きな武器は使いこなせないだろうな。この大きさが、自分に合ってるってわけか。)