Slime Slime Slime
ミコトは魔女の家に向かって走っていた。
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覚醒したミコトは、まるで別人だった。魔女の家に着くと、すぐさまドアを蹴破り、大破させた。「入るわよ!」スライム達に手を出されたことが、よっぽど許せなかったのだろう。
ミコトの声は荒々しかった。あまりの衝撃に、家の中にいた魔女はうろたえた。
だが、相手は裏切り者だ。スライムカフェで大人しく働いているフリをして、チャンスを前からうかがっていたのだ。目の前に魔女と、魔女の後ろに捕まったスライム達がいる。
少し離れたテーブルの上には、食事でもするつもりだったのだろうか、果物と果物ナイフが置かれていた。
「フンッ。ちょうど今からこのスライム達を刻んで食べるところだったのに。とんだ邪魔が入ったわ!」
囚われているスライム達は、すっかり怯えている。
「一人で何が出来る!」
魔女は、ゾンビ化したモンスターの群れを呼び寄せた。十何体ものモンスターが、ミコトを食らおうと集まってきた。だが、ミコトの凄まじいまでの気迫に、その場から近づくことさえ出来ずにいる。
剣を持ったミコトは大変美しく、凛としていた。一瞬たりとも動じない。まさしく最強女戦士、無敵そのものだった。そのミコトには、モンスターを壊滅させることなど、実にたやすい。
モンスターの群れは自ら戦うことなく、ミコトの手によって次々と地面に横たわっていった。
「次はあなたの番よ!」
ミコトは素早く、魔女の喉に剣をあてた。魔女はミコトのあまりの動きの速さに、圧倒されていた。
「わ、分かった! スライム達はお前に返そう、だから頼む! この剣を下ろしてくれ!」
魔女は両手をあげ、ミコトに願いいれた。ミコトが剣を持つ手を緩めると、魔女はスライム達を逃がすフリをして、すかさず一匹のスライムを盾にとった。そして近くにあった果物ナイフをスライムに突きつけると、ミコトを挑発してきた。
「こいつの命が惜しければ、その剣をこっちによこすんだ!」
魔女に捕まえられたスライムは、怯えながらミコトを見つめている。ミコトはそのスライムを、まるで懐かしい友人を見るような優しい眼差しで見つめていた。そして魔女を睨み付け、持っていた剣を、魔女の方へ放り投げた。
「こんなもの、欲しければあげるわよ。」
魔女は声を高く上げて笑っている。その時、魔女の後ろにいたスライムが叫んだ!
「みんな! 僕達でミコトさんを助けるんだ!」
すると一匹のスライムが、テーブルの上にあったリンゴを、魔女の頭にポコンとぶつけた。捕まえられていたスライムは、魔女の腕に嚙みついた。
さらにもう一匹のスライムは、魔女に体当たりし、また別のスライムは、魔女の髪の毛を引っ張った。そしてその他のスライム達が、次から次へと魔女にのしかかっていった。