あんなに憶病で弱かったスライム達が、ミコトのために精一杯の力を出して必死で戦おうとしていたのだ。その姿を見たミコトの目に、初めて涙が溢れ出した。

「お前達など、私の敵ではない!」

魔女はスライム達を振り払った。

「剣がなければお前なんぞ、何も怖くないわ! この剣は今すぐ愚かなお前に返してやろう、こうしてな!」

魔女は剣を拾い、ミコト目掛けて切りつけて来た。そして剣が振り下ろされると、ミコトのまとめ髪がほどけ、はらりと肩に落ちた。

「ウッ……。」

その場に倒れたのは、魔女の方だった。

「何故だ……?」

それが魔女の最後の言葉だった。魔女はそのまま起き上がることはなかった。ちょうどその時、タクがその場に駆けつけた。やはりミコトが心配でたまらなかったのだ。

だが、すぐさまタクの顔は引きつった。

部屋の中は、タクの想像をはるかに超えていた。

「ずいぶん派手にやったな……。」

そこはまるで、惨劇のようだった。十数体のモンスターのドス黒い血の海の中に、魔女までもが倒れている。なのにミコトはかすり傷一つない。

「どうやったらこんなになるんだよ……。」

タクは半分呆れていた。

「ミコト! 剣はどうした!? 何も持ってないじゃないか!」

ミコトは相変わらず、微笑んでいる。

「剣なんていらないわ。私には、コレがあるから。」

そう言ってミコトがタクに見せたのは、手のひらに乗った小さな毒針だった。髪の毛の中に隠し持っていたのだ。

「全く……。ミコトらしいな、さすがだよ。」

ミコトは、床に倒れている魔女を指差してタクに言った。

「この魔女はきっと、暗黒の王の差し金でしょうね。スライム達をさらえば、私が伝説の剣を持って来ると勘違いしたんじゃないですか? だとしたら……?」

「王様が危ない! 城に戻ろう!」

タクが叫んだ。