ミコトの指を優しくどけると、タクは妙に納得していた。

「だけどいくら何でも、これは小さ過ぎるんじゃない?」

こんなに小さなナイフで倒せるモンスターが存在するなんて、タクには全く理解出来なかった。そんなことを平然と言い出すミコトに、ほんの少し不安さえ感じたのだ。

「タクさん、私がナイフを持っていることに気付きましたか?」

タクは大きく首を横に振った。

「大きな武器だと逆に、邪魔になる時があるんです。特に私には。それに大きな武器を持っていたら、敵は必死になって力を出してくるでしょう?だから敵を油断させるんですよ。」

思いもよらない言葉だった。ミコトは敵に対する、戦略まで持っていたのだ。だがミコトは、その後もずっと戦おうとしなかった。戦いのたびにタクの後ろに隠れ、少しも前に出ない。

そればかりではなく、道を進むにつれミコトの周りには、じゃれついてくるスライムの数ばかりがどんどん増えていった。太陽が二人を照りつけ始めた頃、ようやくミコトはスライム達に別れを告げ、真っ青に広がる空を見上げた。

その様子は何故か、これから自分達の身に起こるであろう、良からぬ何かを感じとっているかの様だった。(ミコトは何かを察してる……?)

タクは僅かな不安を感じた。

「暗黒の王を倒すには、伝説の剣が必要らしい」

タクがミコトに言った。

「町まで行けば、何か分かるかもしれないな。」

そして二人は、伝説の剣の情報を得るため、町へ向かうことにした。町へ行くには、この先にある森の中を抜けると近道だ。まだ日も高い。弱いモンスターが多少出たとしても、タクには何の問題もないだろう。

二人は戸惑うことなく、森の近道へと入って行った。その近道の途中には大きな泉があり、ミコトははしゃいで泉に近寄ると、コインを投げた。何かの映画の真似事だろうか。

タクは笑って、そんなあどけないミコトを優しく見つめていた。