Slime Slime Slime

タクは居ても立っても居られなかった。いくらミコトでも、相手が自分のコピーでは太刀打ち出来ないだろう。だからと言って、場外からエントリーされたもの以外が手だしすることは出来ない。

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タクは名の知れた強者戦士であり、剣の腕前では右に出るものはいない。そのタクを相手に、ミコトは今から戦わなければならないのだ。

対等に戦えるはずがないだろう、会場にいる誰もがそう思っていた。そして偽物のタクの勝利を確信していたのである。

「何でこんなことに……。」

タクは頭を垂れている。奇跡が起こることを信じて、祈るしかなかった。ミコトがステージへと連れて行かれてしまう。タクがたまらずに、ミコトの背中に向かって叫んだ。

「ミコト! 絶対に死ぬなよ!」

その声にミコトがタクの方を振り返った。

「え……?」

タクはミコトのその思いがけない表情に驚いた。ミコトは落ち着き払い、優しい微笑みさえ浮かべていたのだ。そして、すぐにタクに背を向けると、後ろ向きのままタクにⅤサインを送った。

「ミコト……?」

タクは場内に消えていくミコトの背中を、不思議そうに見つめていた。ステージでは、人一倍体の大きいガッチリとした偽物のタクが、その体に見合うほど大きく鋭い剣を持ち、どっしりとミコトを待ち構えている。

それに引き換えミコトは、何とちっぽけで弱々しいことか。それに無謀にも、小さなナイフ一つしか持っていないのだ。無残に試合開始のゴングがコロシアム会場に鳴り響いた。

会場は一気に沸き上がり、歓声が飛び交う。誰もが、ミコトがぶざまに逃げ回る姿を見てやろうと体を乗り出し、タクの素晴らしい勝ちっぷりに期待していた。