- - - - - - - 二人で- - - - - - -

帰り道。

駅までの道を三人で歩く。

「オレ今日塾寄るからここで」

角を曲がる雄大。

「じゃあな」

「また明日」

サワと二人になった。

「いつも帰り歩き?」

「うん。朝はバスだけど」

「疲れない? けっこう距離あんだろ」

「ゆっくり考えながら歩くの、好きなんだ。朝は余裕ないから」

「ふぅん。俺も歩くの好き。歩くと、こんがらがった頭がすっきりするというか、悩みが、軽くなる」

「悩みあるんだ?」

「無さそうに見える?」

「友達多いし、いつも楽しそう。女子にもウケがいいよ」

「んー、よくチャラそうって言われる。全然そんなつもりはないんだけど」

「チャラくないよ。優しくて、人懐っこくて、あれ、この人、前から知ってたっけ?って思っちゃうような」

「ありがとう。チャラいってけっこうトラウマで」

「え?」

「やっ、なんでもない。サワ、明日ひま?」

「ヒマそうに見える? …ヒマ(笑)」

「映画行かない? エルトン・ジョンのロケットマン」

「あー、知ってる。予告みたかも、テレビで。エルトン・ジョンね、実は1曲しか知らないんだけど」

やった。やっぱり知ってた。

「俺も、あの曲1曲しか知らない。だけど凄く好きな曲」

「あの曲でしょ?」

「そうそうあの曲(笑)」

なんだ、この会話(笑)。でも、きっとあの曲だ。

さっそくスマホでチェック。

「明日、朝、8:50からと15:40の回があるんだけど」

「早いので行こうか。あの曲絶対出てくるよね」

「いいの? ヨッシャ! じゃあ、明日駅で待ち合わせしよう。LINEすんね」

「わかった。明日ね。あと今日、練習でやった曲の名前も全部教えて」

「オッケー!」

手を振る、改札。

もっと話したくて、勢いで誘ってしまった。でも、すんなりオッケーしてくれて、すげぇ嬉しかった。