※本記事は、2020年10月刊行の書籍『喰い改めよ! あなたはあなたが食べたものでできている』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

健康食むおおらかな国民性

こうして見てくると、イタリアの食事がいかに健康的かよくわかりますね。日本でもバブルのころ、イタメシブームが巻き起こりました。高級なイメージが強いフレンチとは異なり、カジュアルでちょっと小粋な雰囲気が受けたのではないでしょうか。


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おいしさもさることながら、健康面からもおおいにおすすめしたいですね。このような食事が、陽気なイタリア人のベースにあるのです。主食がピザやパスタというのも、明るくおおらかな国民性を育んでいるのでしょう。

スパゲティの原料のデュラム小麦粉は、良質のたんぱく質やグルテンを多く含んでいます。そのため、独特の風味とコシがあり、このデュラム小麦粉でないと品質のよいおいしいパスタは作れません。

美しい黄金色は、デュラム小麦本来の自然色です。風土の違いからか、残念ながら日本ではあまり生産されていません。日本でも気軽に入手できるようになることを期待するところです。

同じ炭水化物でも、パスタは固ゆでにしてゆっくり食することによって血糖の上昇を抑えるので、肥満対策には不可欠です。また、イタリア料理にはつきもののハーブやニンニクは、言うまでもなく健康食の代表で、日本でも摂取量は増加の傾向にあるようです。

そして、イタリアといえばワインです。フランスワインが高級志向なのに比べて、イタリアワインはデイリーに楽しむワインといわれています。料理の傾向によく似ていますね。赤ワインのポリフェノールが、生活習慣病や老化を防ぐことは広く知られています。

最近の研究によって、認知症を予防する効果があることもわかってきました。こうした食事が、心の安定と脳の活性化をもたらし、すばらしい芸術やファッションを生み出す源になったのかもしれません。

イタリア人は、ピザやパスタを食べながら気軽にワインを楽しみ、カンツォーネを歌います。私がイタリアの家庭に招かれてもっとも驚いたことは、食事中にいきなり立ち上がって歌いだすことでした。招いたほうも招かれたほうも、興に乗るとみんなあたりまえのように歌うのです。

最初はあっけにとられましたが、いつものことなのですぐに慣れてしまいました。そういうお国柄なのですね。温暖な気候に加えて健康的な食事とおいしいワインが、イタリアの文化や国民性をつくりあげてきたに違いありません。イタリアンに乾杯!

スローフードでしもう

イタリアはスローフード発祥の地でもあります。たまたま私はスローフード協会秦野支部理事でもありますから、スローフードの理念やあゆみを少し述べます。