※本記事は、2020年10月刊行の書籍『喰い改めよ! あなたはあなたが食べたものでできている』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。
スローフードで食を楽しもう
だが、しかしそうとばかりも言っていられないような食事情が、昨今そこかしこに見え隠れしています。興味深く感じた記述がありましたので、ここに掲載いたします。
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現在の世界人口は74億人と推計されているが、国連の推計では、遅くとも2100年には110億人に到達、となっている(それより数十年早く到達、という予測もある)。
そして、現在の科学技術から考えると、2100年までに他の惑星に移住できるロケットは作れそうにないし、ロケットを作れたところで「水と酸素のある惑星」はどこにもない。
このような現実を踏まえると、ヒトの生き残り策の選択の幅はあまり広くないように思われる。
ヒトの主たる食料は動物と植物、という原則は2100年までは変わらないだろうし、変えられないだろう。だからヒトは、地球上の植物と動物のうちから最も効率的に食料となるものを選択するしかない。
植物ではやはり、当分は穀物を中心にするしかないだろう。糖質が多く、他の栄養に乏しいという欠点はあるが、太陽エネルギーを化学エネルギーに転換する能力の高さは他の植物の追随(ついずい)を許さないからだ。
その上で、他の嗜好品植物の栽培を止め、代わりに窒素固定能力がありタンパク質の多いマメ科植物を栽培するのがベストかもしれない。動物では、恒温動物(牛、豚、鶏など)の飼育から、変温動物(昆虫など)の飼育に転換することが絶対に必要だ。
一般に、牛肉1キロ、豚肉1キロ、鶏肉1キロの生産には、穀物はそれぞれ11キロ、7キロ、4キロが必要だといわれているが、これはあまりに効率が悪過ぎる。恒温動物では体温の維持のために基礎代謝の7割が使われ、餌(えさ)に含まれるエネルギーの多くは熱となって失われるからだ。
その点、変温動物は体内で熱をあまり作らないため、多くの餌を必要としない。変温動物には、無脊椎動物、魚類、両生類、爬虫類があるが、飼育の容易さと餌がヒトと競合しない点で昆虫が最右翼だろう。
その体はタンパク質と脂質に富んでいて理想的であり、宗教的タブーの対象でもない。
そして何より数が多く(ヒト70億人の合計体重と、世界中のアリの合計体重はほぼ同じという推計があるくらいだ)、少なくとも計算上は数十億〜100億人分のタンパク質は昆虫で賄(まかな)えそうだ。
そして先進国もようやく、1万年間忘却していた食材としての昆虫の重要性に気が付き始めたようだ。
近未来に待ち受けている「これまでに経験をしたことがない」事態の前には、昆虫以外に選択の余地はないことは明らかだからだ。