途方に暮れる私が訪ねた友人とは...
歳のせいにしてしまえばそれまでだが、頑固な気質が私を踏みとどまらせてしまうのだ。そのうちまた新しいものが出るらしいが私には全く関係のないことだ。
それは中学時代からの付き合いがある古書店を営む友人にも言えることだろう。私とこの友人は死ぬまでアナログ派を貫くかもしれない。友人は私と違って頭も良いから手元にあれば使いこなすことも訳ないだろうが。
同じく中学時代からの友人でベンチャー企業を立ち上げた友人は新しいものには目がない。おまけに頭も良い。何度かオフィスを訪ねたことがあるが、必ず最新式の機器が揃っていた。恐らく今度出るウィンドウズエイトとかいうものも買うのだろう。
「はあ、うまくはいかないものだな」
いっそのこと自伝をモチーフにファンタジーっぽく仕上げてみようか。ふとそんな考えが頭を過(よぎ)る。
――そんなことができるわけがない。
私はこれ以上自分で考えるのが嫌になって原稿を放り出した。このままうだうだと考え続けていると何か自分じゃない別のものになってしまいそうな気がしたからだ。
「あいつの所にでも行くか」
気分転換も兼ねて、私は久方ぶりに古書店を営む友人を訪ねようと重い腰をあげて家を出た。