第二部 教団~5

杉並区にあるその家は、古い建物だったが建てつけはしっかりした二階建てだった。正面の玄関とお勝手口があり、玄関の脇には小さな戸があって、庭に出られるようになっている。風間が老人を連れて訪ねると、中から品のよさそうな老婦人が転がるように駆け出してきた。

「まあ、有難うございました。十日ほど前からいなくなってしまって、もうどうしようかと思っていたんですよ」
「広いお庭ですねえ」

風間は玄関のところで辞去しようとしたが、「お暇が少しでもあるのなら、ぜひ」と請われて、つい応接間に上がった。老人は疲れたらしく、老婦人にいざなわれるがままに、すぐに別の部屋に行ってしまった。

老人の様子を聞くと、おばあさんは顔を曇らせて絶句した。

「お二人でお住まいですか」

話をそらそうとして風間が言うと、おばあさんは嘆息した。

「いえ、わたしは妹で、ここの近くに住んでいるのですよ。兄も少し前までは丈夫でしたが、このごろめっきり老けまして、半年ほど前からボケてしまいましてねえ。ごらんの通りなのです。近くに住んでいるもので、いつもはヘルパーさんに任せて一日おきに世話をしにくるのですが、もう限界になりまして、そろそろ家を売って、ホームにでも入居させなければと思っていた矢先なのです」

大変そうだな、と風間は思った。ボケる方も大変だが、世話をする方はもっと大変だ。

風間の知り合いにも親の介護に苦しんでいるものがいる。特に、老人が老人の面倒を見る場合が大変なのだ。

ボケた後でも、他人の世話を嫌がって暴れるものもいる。愛憎が絡んだ上に、肉体的精神的な疲労が重なって思い余り、心中をするものまであるのだ。