帝産ロッヂ宿泊施設の廊下を麗子が歩いている。彼女はスポーツブランドではない高級ブランドのスポーツウェアを着ている。ルックスも可愛くアイドルみたいだ。彼女は向こうからやってくる男の子を見て顔を輝かせる。向こうから来るのは、一ノ瀬純。まだ子供なのにモデルのように足が長く端正な顔立ちで、スケートをしている姿は、美しい。
「一ノ瀬君、久しぶり。去年の野辺山以来だよね」
「ああ、そうだね。カナダの生活には慣れた?」
「ええ、英語も話せるようになったし、スケーターの友達もできた」
「家の近くにリンクあるんだろ?」
「車で5分くらいのところにあるの。一年中滑れるし、日本みたいに混んでなくてレッスンも受けやすい」
そこに健太がやってくる。彼は、一目でエネルギッシュな人物だとわかる。純と麗子のところに割って入ってきて話しかける。
「はじめまして、伊藤健太です」
健太の方に振り向く2人。
「僕も同い年です。よろしく」
手を麗子に差し出す健太。
「ここは小学校じゃないのよ。同い年とか関係ないじゃない」
手を無視する麗子。
「僕は一ノ瀬純、よろしく」
手を握る純。
「よろしく、君は?」
麗子に向かって訊く健太。
「本城麗子。私は遊びに来たんじゃないから」
といらだっている。
「僕も遊びに来たんじゃないよ。スケートがうまくなりたいんだ」
「そう、それじゃ頑張ってね。純君、またね」
純に手を振って歩き出す麗子。
「気にしないでいいよ。彼女は負けん気が強く全員がライバルだと思ってるから」
「そうなんだ」
と言いながら麗子の後ろ姿を見ている。