二人は照明で煌めいている街の中心部をドライブした。そして聖ミハイル教会のところからドックに向かって伸びていた石畳に乗り入れた。
アンカはグリマルディに、来年開催される第一回ベオグラード・カーレースについて話した。そのレースは、セルビア自動車クラブと、有力雑誌「ル・ベロシペード」によって組織運営されるもので、著名な米国人ドライバーであるルイ・シボレーの参画も見込まれていた。
最新の内燃機関が作動している車の他に電気自動車レースを開催することが、アトラクションのひとつとして予定されている。それによって、この自動車の変種が、騒音や大気汚染物質をまき散らす旧タイプの親戚をスピードの点でも凌駕することが期待されていた。
「ベオグラード自動車レース一九二〇」を組織する委員会を来春迎える目的で、メンテナンス要員はこの道を定期的に補修し、石畳のひとつひとつを点検してきた。アンカはそう言って、テスラカーの運転を試みるのにベストの通りだということを自分の道連れに力説した。アンカが運転しながらこれら全てのことを話していた時に、グリマルディは、時々彼女の右手をさわったりした。それに対してアンカは彼の眼を見つめ、また思いやりを込めて微笑んだりして反応していた。