現代セルビア文学におけるホラー、SF のジャンルの旗手として活躍しているゴラン・スクローボニャ。衝撃作『私たちはみんなテスラの子供 前編』を日本初公開します。
第一章 カンタレラ! カンタレラ! 一九一九年六月
ダイニングルームでは、ディナーの準備ができていた。十台のテーブルには白いテーブルクロスが掛けられ、センス良くアレンジされた食器類、燭台やバラの生けられた花瓶があった。
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そしてバイオリン弾きの若者、ピアノを弾く少女がいた。彼らは窓の近くの隅で、よく知られた外国と国内のヒットソングメドレーの静かで控えめな演奏をちょうど開始したところだった。
まだ宵の口で七時を過ぎたばかり。外はまだ明るかった。しかし、宿屋では、ディナー料理は七時から九時までに出されることになっていた。
アンカはグリマルディにしようとしていた事のために、ディナーの後に十分な時間がほしいと願った。実は彼がもっと後で現れることだって十分にあり得たのだが、アンカ・ツキチは、大佐のもとで何年も勤務した結果、自分が出くわした状況に順応する技を身に着けていた。
さて、如才ない若いウェイトレスがメニューを勧めてきた。彼女がアピールしたところによると、それは著名な料理研究家ヴィクトル・ヒルツラーが推奨したメニューに基づいて構成されたのだそうだ。二人はすぐにそれをディナーメニューとして選んだ。
グリマルディは、オルレアン風コンソメ、白身魚のグリル、鳩肉の英国風ピタパン、野菜サラダ、トマトのマヨネーズ添えに決めた。アンカは、東洋風卵料理、ホルモンの煮込み、家庭料理風ベークドポテト、生ハムの冷菜、牛タンのセロリとサトウダイコンのサラダ添え、それから、ポール・サリュー・チーズを選んだ。