「被災地ではDVが増えたのか」と聞くと女性相談担当者たちは「顕在化した」という。内閣府の調査では3組に一つのカップルにDVはあるというのだから、当然なのだと。離婚も増加したと伝えられている。だが、担当者は「離婚できるのはDVじゃありません。離婚できないのがDVです。別れてくれないのですから」という。

被災地で顕在化した理由は、住環境の変化が大きいと考えられている。仮設住宅などの狭い空間に「閉じ込められた」状況で暴力が表面化する、家を失い夫の家族との同居などで軋轢が激しくなる、夫と結婚以来初めて離れた生活をして、それまでの夫の行動を客観的に暴力と認識できるようになる、等の理由が考られるという。

被災地で顕在化しているものはまだまだ氷山の一角であり、もっと深刻なものは隠れているのだと。そうなのだろう。今は私もそう信じることができるようになった。

あれだけの相談表を読んでは、否定することなどとてもできない。震災は「DVに気づく」人々を増やしたということもできる。震災によって、女性たちは多様な支援者と出会うことになった。被災地のDVが顕在化したのは、支援者が女性たちに「あなたが受けているのは暴力ではないですか」という疑問を投げかけたからではなかったろうか。

被災者支援は、「家族」の中に新鮮な他者の視線が入る機会であったということもできるのかもしれない。