「何やってるんだよ……。」
タクが心配そうに声をかけるとミコトは、タクの目の前に見つけたばかりの、もえぎ色のクローバーを差し出した。
「はい、これ。幸運のジンクス。」
ミコトはモンスターが襲いかかってきたことなど、気付きもしなかったかのように微笑んでいた。タクにはその光景がとても不可解に思えてならない。あの時、確かにミコトはタクの目の前にいた。
(なのに何故、一瞬でこんな離れた場所で、しかも四つ葉のクローバーを摘んでいるんだろう……?)
そう言えばもう一つ、不思議でならないことがある。ミコトはこれからモンスターと戦わなければいけないというのに、武器一つ持っていないのだろうか? 見た感じ、どこにも武器は見当たらない。それに、あまりにも身軽過ぎる。
「ミコト、君は武器を持っていないの?」タクはミコトに率直に尋ねた。
「いいえ、ちゃんと持っていますよ。私の武器は、これです。」
そう言ってミコトが差し出した手の平の上には、小さな二つ折りのナイフがのっていた。