Slime Slime Slime
「えっ? ……こんなに小さいナイフが武器?」
不思議そうな顔をしているタクに、ミコトは微笑んだ。
「こんなに小さなナイフでも、急所を突けば簡単に敵を倒せるんですよ。」
ミコトはそう言いながら、タクの喉仏を人差し指でツンツンッと突っついた。
(……確かにミコトの言うとおりだ。それにミコトの小さい体じゃ、大きな武器は使いこなせないだろうな。この大きさが、自分に合ってるってわけか。)
ミコトの指を優しくどけると、タクは妙に納得していた。
「だけどいくら何でも、これは小さ過ぎるんじゃない?」
こんなに小さなナイフで倒せるモンスターが存在するなんて、タクには全く理解出来なかった。そんなことを平然と言い出すミコトに、ほんの少し不安さえ感じたのだ。
「タクさん、私がナイフを持っていることに気付きましたか?」
タクは大きく首を横に振った。
「大きな武器だと逆に、邪魔になる時があるんです。特に私には。それに大きな武器を持っていたら、敵は必死になって力を出してくるでしょう? だから敵を油断させるんですよ。」
思いもよらない言葉だった。ミコトは敵に対する、戦略まで持っていたのだ。だがミコトは、その後もずっと戦おうとしなかった。
戦いのたびにタクの後ろに隠れ、少しも前に出ない。そればかりではなく、道を進むにつれミコトの周りには、じゃれついてくるスライムの数ばかりがどんどん増えていった。