しばらくは創作に勤しむ日々が続いた。いくら受賞作選定の理由を知ったところで作風は簡単には変えられない。むしろ、いっそうこだわり続けようと思った。中尾魁、島崎、理津子のように俺の作品を認めてくれる存在がいる限りは、こだわることで道が開ける気がする。そう信じなければ創作を続けられない気がした。そしてそれは、かけがえのない家族を守ることになる……と信じたい。

そんなある日、珍しく川島から連絡がきた。「やあ、元気でやってるかい」いつものように余裕たっぷりの口調だ。

「変わりなしさ。多忙な愛澤センセイが俺に連絡なんていったいどうしたんだい。またパーティーの案内か?」

「さすがのわたしもそう度たび々たびはないよ」川島は笑いながら言った。

相変わらずの自信家ぶりが鼻につく。

「実は、芹生に折り入って相談がある」

「大先生が俺に相談なんて。金ならないぞ」冴えない冗談を返した。

川島の大笑いが聞こえる。

「金ね。寒いジョークはよしてくれ。実はアシスタントを探している。それをお前に頼みたい」