薬剤師・国際中医学専門員の佐田義尚氏が、「かゆみの原因」そして対処法についてわかりやすく解説していきます。

かゆみの原因~運動と食事~

(6)運動

適度の運動は体の新陳代謝を活発にし、精神的にもストレスの解消になるなど通常は必要なものです。

「発達障害かもしれない職場の人」との関係でうつ病になった話
 

例えば足の大きな筋肉は〝第二の心臓〟と呼ばれて、動かすことで血液をスムーズに流す働きがあります。また運動の後、気持ち良く感じることで体内でのストレスが減り、免疫力が上がってきます。現代人は運動不足の方が多いので〝体を動かすこと〟は意識する必要がありそうです。やはり人間も〝動物=動く物〟なんです。

しかしそれは体が正常な場合の話であって、異常をきたしている時に、そのままあてはめるわけにはいきません。

アトピー性皮膚炎の場合、判断が難しいことがあります。というのも、体には皮疹やかゆみがあり、慢性化していると持続的な疲労を伴うことが多いものの、体は動きますし、むしろ動かすと気がまぎれるので良いと考える向きもあるからです。

私も何度かかゆみをまぎらわせるためにジョギングや、筋トレと称して腹筋・背筋をしていたことがあります。そういった経験を含めた結論ですが、汗をかいて体調が良くなる方を除いて、皮膚がある程度正常になるまで、過度な運動は避けたほうが良いのではないかということです。皮膚に強い炎症があれば想像に難くありませんが、皮膚が肥厚したり、治癒過程で脆弱な皮膚しかない場合も過度に動かさないほうが良いと思います。

その理由は、薄皮でかろうじて皮膚を守り、新たな皮膚の再生を待っている時に、運動により皮膚を動かして薄皮を剥ぎ取りたくはないためです。

また汗腺が潰れている状態で動かすと、汗で排出されるべき異物が体内にとどまってしまうように思われます。これが往々にしてかゆみを誘発するのです。事実、私の場合も先の運動の後、体の熱がなかなかひかず、冷たいシャワーを浴びても冷めないことがありました。さらに局所的に大汗をかいたにもかかわらず、汗腺のない皮膚はむくんだ感じがし、かゆみが噴き出してきたのです。

ではアトピー性皮膚炎の治療過程ではずっと運動が禁止か、というとそうではないと思います。循環が良いことは非常に大切ですので、皮膚の状態に応じて軽く体を動かしたいものです。さらに皮膚が良くなるにつれて、ストレスにならない程度に積極的に取り入れた方が良いと思われます。運動後むくみや極端な尿の減少・かゆみなどが出てくれば控えるべきでしょう。