近代の日本において新しい女性像を作り上げた「蝶々夫人」のプリマドンナ、三浦環。最近では朝ドラ『エール』にも登場し話題となりました。本記事では、オペラ歌手として日本で初めて国際的な名声を得た彼女の華々しくも凛とした生涯を、音楽専門家が解説していきます。

声楽指導

その一

声には天性がございます。いくら教わっても復習っても声がよくならない人がございます。そういう人は脳が悪いのか、耳が悪いのか、咽喉が悪いのか、とにかく成功はむずかしうございます。

もっとも、始め声の出し方のわかりませぬうちは無理に声を出そうといたしますから、作声になってどこまでも大きい声を出すということができません。声にはクオンチチーが無くてはいけないことをユンケル先生がよくおっしゃいます。作り歌では声の音量が十分にいかないのでございます。

ご承知のように三味線では地声で謡わなければいけないと教えます。それが自然日本人にしみこんでいるためか、初学者はみないざうたうとなると咽喉を締めて歌います。そこで調子が甘くいかないだけでなく声が奥の方にこもってしまいます。高く歌うつもりでも低い声になる。それは決して音楽の法に叶った発声ではないのでございます。

そのニ

初学者ははじめまず息を吸うことから始めます。

〈範示〉
そうしてフーッと出す息をはじめは細く、だんだんに膨らませ終いを細くするように馴れさせます。

〈反復範示・演奏〉
これによって発声をだんだんに強く高くするように何回も何回もおさらいをするのでございます。その時注意いたしますことは身体をまっすぐにして吸った息を沢山に貯えておいて、お腹に力を入れて息を出します。

〈範示〉
これから皆さんに口を大きく開けてみせていただきますが、歌をうたいます時には大きく口をあけ、舌を平らに下げて舌の奥が塞ったり反ったり凹んだりしてはいけません。