アンカが予想していたよりも、ずっと容易にさりげなく知り合いになることができた。

グリマルディが一緒に朝食をとりませんかと誘うと、アンカは、れっきとしたイタリアの紳士とお話しして僅かにしかできないイタリア語の復習になれば、と誘いを受ける。カット・オレンジ、シリアル食品のファリーナとミルク、子牛レバーのベーコン添え、リヨン風ポテト、クロワッサンとコーヒーといった朝食を食べながら、アンカはグリマルディと会話を交わしたが、自分自身のトスカーナ地方訪問の詳細については、できるだけ語るのを控えた。

彼女は実際にはそこに行ったことは一度もないのだ。ただし、事務所から送ってもらった資料のおかげで、話を入念に準備しておくことはできた。グリマルディはアンカに、イタリアの食品業界の状況や、自分が働いているとされている会社の業績をイタリア以外の地域に拡大する必要性について仔細にわたって説明した。巨大なセルビア市場において、ハム、ソーセージ、チーズ、その他の調整食品の品質が認められ、大衆の支持を得るであろうと。

彼の語り口は熱心で期待感に満ちていた。コーヒーの後、程なく、アンカはグリマルディに、商談の成功を願っていることを伝え、それから、第一ギムナジウムの校長と会う予定があるのでと、謝った。