「それより禅、何か金儲けしようぜ」その言葉に、禅は反吐が出そうだった。
「そうですね」
「何か金儲けして、いろんな奴らを平伏させるんだ! 最高だろ?」
「………」
禅は思った。〝努力もしないのに、金儲けをしたい? こんなクズが生きている意味があるのか?〟
会計になると剛史は言った。「社長、頼むぜ!」禅は、全ての会計をした。そして店を出た。
剛史は行きつけの店があるから、もう一軒付き合えと言ってきた。禅は思った。〝今日は災厄の日だ……〟禅は、剛史と次の店に向かった。
それから剛史との付き合いが始まった。
禅は嫌だった。何が嫌かといえば、理由はいろいろとある……毎回飲み代を払わされていた事、嘘つきな事、勘違いしている事……言い出したら切りがない。つまり人間的に、生理的に嫌いだという事だった。
しかし元々の人の良さと、慣れというのは恐ろしいもので、剛史の事を〝そういう人間なんだ〟と自分に言い聞かせ、割り切って付き合った。剛史は相変わらず定職につかず、いつも禅にたかっていた。剛史にとって禅は良い鴨だった。