二人が酒場を出ると、もう外は白い日が昇り始めていた。タクはミコトの目を見て優しく話しかけた。

「暗黒の王の話を聞いて、どうするつもりだったの?」

するとミコトはふいに空を見上げ、何かを思いつめていた。その目にはまるで、空ではない、別の何かが映し出されているかのようだった。

「私はただ、皆の笑顔が見たいだけ……。だから、この世界を元に戻したい。そのために、たとえ一人でも暗黒の王を倒しに行くつもりでした。」

ミコトが振り返るとタクはドキッとした。タクを真っすぐに見つめたミコトの澄み切った目は、真剣そのものだった。一体、何がミコトをそこまで駆り立てているのだろうか。

その時のタクには、まるで理解が出来なかった。ただ、ミコトの強い思いは、しっかりとタクに伝わってきた。

(こんなことを言うなんて、まさか本当にこのミコトが真の勇者なのか? 勇者が、女……?)

暗黒の王を倒すことが出来る唯一の勇者が女性かもしれないということは、タクでさえ思いもよらなかった。