どうして自分はこんなにも独りぼっちになってしまったのだろうか。ぼくのまわりにはもうだれもいないではないか。これが、正しいと信じて疑わなかった自分の努力の結果なのだろうか。
自分の努力とは、まわりから自分を切り離して殻のなかに閉じ込める、そんな独りよがりなものだったのか。友がいる。ぼくは彼をそう思っている。彼をそう呼んでいる。だが、彼のほうはぼくを同じように思ってくれているのだろうか。
ぼくのことをもまた、友と呼んでくれるのだろうか。叫びとも慟哭(どうこく)ともつかぬものが渦を巻いて頭の奥に吸い込まれていく。溜まっていた疲れが、ようやくいまになって堰(せき)を切ろうとしている。
ベッドサイドの時計を見た。午後四時三十八分を報(しら)せていた。どこかへ出かけるには遅い時刻だ。どこかに出かける当てもなかった。握っている風船の紐を放すように張り詰める気持ちを解いた。そのまま重い眠りにぼくは沈んだ。