公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。当記事では補助金をめぐる諸問題について、筆者が語ります。
疑わしきは却下せず
インターネットで、詐欺罪の立証は非常に難しいので森友学園事件は「補助金適正化法」違反で進められるのだ、と誰かが書いているのを読んだことがある。詐欺罪の立証は確かに難しい。だが、「補助金適正化法」違反でも立証するのはそう簡単ではない。
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不正らしいのだが不正とは断定できないときはどうするかという問題もある。実際に議論が分かれた例を紹介したい。仙台市の運送会社、I社としておこう。I社はすでにグループ補助金を受給していて復旧していたが、新分野での補助金申請があった。
グループ補助金の「新分野」については先に触れたが、もう一度説明しておこう。
グループ補助金は東日本大震災前に所有していた施設・設備の復旧資金なので、震災前に所有していなかったものは対象にならない。しかし、新たな施設・設備がないと復旧できないと判断された場合は、被災したものの復旧を断念し、それを復旧した場合に要するであろう費用の額を、震災前に所有していなかったものの取得にあてることができる、というものだ。
「新分野」というタイトルにはなっているが、必ずしも新しい分野に進出する必要はなく、ただ震災前よりも、例えば機械の台数を増やすという場合でも認められる。
I社の場合も、被災した地下タンクの復旧を断念し、その分(再設置すれば1億円を要するという見積書が提出されていた)を車両の購入にあてるというものだった。そこにある問題が生じた。震災前に地下タンクを所有していたということが通常の方法では確認できないのだ。