行方不明だと思われていた林ら3人が、潜伏先だった縄文人ユヒトらの集落・イマイ村から笹見平へ、ついに帰還した。多くの者が歓喜する中、様子のおかしい者たちがいた…。

歴史が変えられるのを恐れた末の犯行…!?

「おっと、どこに行くんだ?」
盛江は、その場を離れようとする早坂と沼田の前に立ちはだかった。

沼田は真っ青になって歯をガチガチ鳴らしている。早坂は下唇をかみしめていた。

イマイ村の若者らは、持ってきたお土産の食料を置くと帰り支度を始めた。ユヒトは別れ際、林に目配せした。林は厳しい顔をしてうなずいた。泉は去りゆくユヒトの背に追いすがって言った。

「帰ってしまうの? もう少し居てほしくって。何だか怖いの」

ユヒトは足を止め、
「今日は、ササミダイラの人たちが自分自身に厳しい判断をつきつける日になる。あの三人は強い決意と覚悟をしているよ。そんな時に、外の人間がいてはいけない。また何日したら来るから、気をしっかり持って」

イマイ村の若者たちが去ると、笹見平に重たい空気がのしかかった。林は全員の前に立った。盛江と砂川は、早坂と沼田をその隣に立たせ、鬼の形相で睨みつけている。早坂と沼田はうろたえていたが、取り乱す様子は無かった。

林は全てを語った。沼田に呼び出されたこと、早坂に突き飛ばされたこと、ユヒトらに助けられたこと――。聴衆の顔色がみるみる変わる。中学生らは怯えた。あの二人が人殺しをはたらこうとしたなんて。大学生は怒った。「信じていたのに!」「どうしてそんなことをしたんだ!」。早坂と沼田は黙り込んでいる。

岩崎が罵声を制して言った。

「突き飛ばされた俺が言うのもなんだが、早坂も沼田も、歴史を変えられるのを恐れたんだ。決して私利私欲では無い。やり方はまずかったが、こいつらだって考えがあってのことだったんだ。そこのところはよく踏まえてほしい」