十二月の始めに、長さ一七〇センチのマフラーは編みあがった。両端に、長さ七センチのヒラヒラの飾り、フリンジを付け、完成した。
二十日の日曜日を待つばかりとなった。私はできあがったマフラーを緑色の紙に包み、赤のリボンを結んだ。しかし、不安もあった。神矢はこれを喜んでくれるだろうか?
彼は『ココ』では、いつもおごってくれ、『スノーグース』の本をくれ、誕生日にはご馳走を作ってくれた。そして、私の頼んだ絵を描いてくれている。
一線を越える事なく、彼は私に与え続けてくれている。私からのプレゼントを、彼は受け取ってくれるだろうか? よくわからなかった。
八日(火)、仕事から帰ってみると、ポストに不在届けの紙切れが入っていた。父からだった。何だろうかと思いながら、書いてある番号に電話し、宅配が届くのを待った。
一時間ほど待っていると、インターホンが鳴り、宅配便が来た。受け取りに行くと、細長い大きな箱だった。それを抱え部屋へ戻り、包みをほどいた。
手紙があり、それはあとで読む事にし、長い紙箱をあけると、たとう紙に包まれた着物が入っていた。二カ所ある紐をほどき、たとう紙をあけると、緑色の着物だった。それを見てから、手紙を読んだ。
登世子へ
元気でいるか。お前が出て行ったのには、それなりの理由があったのだろうから、もう何も言うつもりはない。ただ、俺なりのお前への思いもあるので、聞いてくれ。