それぞれの道
慌てて困った顔をした賢一は…
「そう言う意味じゃないよ」
そう言い訳をする賢一を見て禅は大声で笑った。
「ハハハハ……」
それに釣られ、賢一も苦笑した。禅は、ふと窓の外を眺めた。
「この辺も随分変わったよな、子供の頃は何も無かったのに……」
「そうだな」
禅は思い出したように言った。
「あの辺に、空き地があったよな!」
「ああ、あった」
二人は懐かしそうに、昔を思い出していた。
「よく遊んだな」
「ああ、そうだな」
昔の事を懐かしむ禅は、ふと思い出した。
「将太君、相撲部屋で頑張っているのかな?」
「頑張っているみたいだ、もうすぐ幕下らしい」
禅は、高校から地元を離れ、寮に入ってしまった。だから地元の情報がわからなかった。しかし、賢一は自宅から通っているので、地元の噂は耳に入っていた。
「そうか……頑張っているのか……」
そう言うと禅は、将太の言葉を思いだした。
“俺は横綱になる! お前もバスケットで上を目指せよ”
「………」
“そうだ、将太君と約束したんだ、俺も頑張らないと”
禅が、そう考えていると賢一が言った。
「剛史、覚えているか?」
「ん!? もちろん覚えているよ」
それを聞いて、賢一の顔が曇った。