兄の友人たちのとの合コンで、恋に落ちてしまった香奈は…
「何だって?」
忙しいといってなかなか話を聞いてくれなかった兄は、ようやく香奈の打ち明け話を聞くと、ぽかんと口を開けた。
「そうか、小林かあ」
香奈はうまくしゃべれなくなってしまった。せっかく信頼して打ち明けたのに、兄は軽く思っている。子供が大切なものをバカにされたとき、おそらくこんな気持ちがするに違いない。
「おい、なんだよ、泣くなよ」村上は唇をかんで部屋を出て行こうとした香奈の前に立ちふさがった。
「よりによって、一番煮ても焼いても食えないようなやつの名前を言うからさ。実はさ、後で聞いたところでは、あのメンバーの中で香奈のことが好きだったのは、風間なんだがなあ」
「もうお兄ちゃんなんかに頼まない」
部屋を出ると、悔し涙が頬を伝っていた。打ち明けるなんて、バカだった。手紙を書こうと思った。でも、どうやって住所を知ったらよいのだろう。兄に聞くなど意地でもしたくない。
次の日、香奈は兄のいない隙に兄の部屋にこっそりと忍び込んだ。兄が手紙類を整理している場所は知っている。香奈はほどなく一通の年賀状を発見した。
村上覚様と角張った字で書かれた年賀状を、香奈は両手で握り締めた。