それは、工事げんばでよく見かける、プレハブのたてものでした。まどガラスにはヒビが入っていて、うすよごれたカーテンがひかれています。
「あいつ、ほんとにビンボーだったんだ」
「まさか、あんなオンボロの家に、すんでるなんてな」
「クラスのやつらに言ったら、みんなびっくりするだろうな」
レオとムッチーは、大発見でもしたみたいに、話しています。
『えっ? まさか、クラスのみんなに言うつもり? 目つきが気に入らない、ってだけで?』
ヤマトは、こころの中で、思わずさけびました。
『やっぱり、ついてくるんじゃなかった!』
あきれるとどうじに、なんだかはらが立ってきました。ヤマトは、じりじりあとずさりすると、レオたちのせなかにむけて、するどく言いました。
「ぼく、さきに帰る!」
へんじもまたずに、ダッと走り出しました。
「あっ! おい、まてよ」
レオの声が、追いかけてきます。
「まてったら!」
ヤマトは、そのまま一気に、野原をかけぬけました。そして川のほとりのヤナギの木のむこうに、パッとかくれてしまいました。
「おい、ムッチー、もたもたすんな!」
レオはヤマトに気がつかず、通りすぎていきます。
「むりだよ~。ヤマトは、クラスで一番、足が早いんだから~」
からだの大きなムッチーも、ゼイゼイ言いながら、行ってしまいました。ふたりのすがたが見えなくなると、ヤマトはなんとなく、ヒロユキの家のほうにひきかえしていきました。