公庫の融資、県の補助金交付事務といった実務経験をもとに、日本の金融と補助金の問題点を考察していきます。
グループ補助金の正当性
「高度化スキーム」融資は「高度化融資」のスキームをまったく継承していない。国が資金を出していることは共通しているが、お互いにまったく異なるスキームを有している。
誰が最初にそう名付けたのか知らないが、経産省にとっては集団化イコール高度化なのだろう。個々の企業の力は弱くても集団としてまとまれば、「高度な」事業が達成されるはずだという、極めて日本的な考え方だ。
私は日本政策金融公庫で、振興事業貸付という、クリーニング業、理美容業、飲食店などの生活衛生業種の企業に対する融資制度の推進の担当になったことがある。
これは個別企業に対する融資であるが、その企業が属している生活衛生同業組合(クリーニング業生活衛生同業組合、美容業生活衛生同業組合など)が振興計画を作成し、その計画が厚生労働省の認可を受ければ、各企業は一般貸付より金利、貸付期間が優遇されるという制度だ。
このスキームはグループ補助金とよく似ている。振興計画が共同事業に相当する。いまここでは高度化融資や振興貸付に対する評価は避けるが、とにかく個別企業に対して何らかの利益を与える場合は一定の条件が必要だというのが国の伝統的な考え方なのだ。