第二章 ゼロからのスタート

TOTO工場内の設備工事

TOTOの中津工場では、便器や洗面器の成型を石膏型を用いて手作業で行っていましたが、ある時から、成型機を導入し、機械で生産するということになり、鉄工業者数社に話がありました。私の工場も入札に参加させていただけるようになり、工務課の課長と生産技術課の課長が、工場を見に来られることになりました。

工場の規模、設備を見て、発注を決めるということでした。課長以下三人の方が見えましたが、旋盤一台、ボール盤一台、あとはカッターと溶接機一式の小さな工場です。

「こんな小さな鉄工所で何ができるのか」と疑問に感じたことと思います。それでも何とか受注することができました。

工程が決まり、他の二社と製作、据え付けの競争が始まりました。他社は人数も多く七、八人で作業していたと思いますが、弊社は弟とバイトも含め三、四人の作業員でした。私の妻も現場での組み立てに加わりました。

しばらくは猫の手も借りたいという状態が続きました。他社の何倍も努力しないと追いつかないので、みんな必死に働いてくれました。

おかげで半年の工期で無事完了しました。試運転も終わり、TOTOの工務課の人たちと、工事にかかわった業者や納入業者と工事完成の宴会がありました。

その時、生産技術課の課長から「実は工場を見に行ったあの時、ここでは無理だろうと思ったけれど、工務課と話し合った結果、仲宗根鉄工所は一生懸命にやってくれているので、ここを育てていこうということになったんですよ」と話してくれました。