2 玄米スープの開発に成功
玄米スープとの出合い
食品のプロである私から見ると、まだ商品として売り出せるレベルには達していなかったのです。
「でも所長。すぐに腐るし、濃度も安定しないし、今の状態では商業ベースには乗せられません」
すると、所長はこう言葉を継いだのです。
「では、製造権も譲ります。たってのお願いだから引き受けてください」
所長はさまざまな福祉施設や医療機関に、玄米スープについて発信していました。すでにたくさんの引き合いがあり、病に悩む人々が完成を待ちわびていたのです。
「でも、私にはお金がありません。研究もここまでです」
「いろいろな食品会社が権利を売ってくれと頼んでくるけど、一生懸命やってくれる人に譲りたいんだ。お金はいらない。頼みます。ひとりでも多くの人を助けてあげたいんだ」
所長に頭を下げられては断れません。それに、病気の人を救いたいという気持ちは私も同じでしたから。
「わかりました。それではお引き受けします」
「じゃあ、よろしくお願いしますよ。吉川さんに引き継いだことを、みなさんに伝えておきますよ」