第二章 教育の目的は子どもの幸せ
(1)今まで教育は「子どもの幸せ」を目的に行われてきたのか
知っている人も多いと思いますが、江戸時代の庶民の教育は、「寺子屋」で行われてきました。そこでは、「読み・書き・そろばん」という社会に出てすぐに役に立つ勉強が行われてきました。子どもたちは「今勉強していることは、自分が将来ご飯を食べることに役に立つ」と思っていたでしょう。
また、各藩の藩校では、藩のためになる人材を育てるための教育が行われていました。教育への志のある人が、私塾を開いたのもこの時代です。
「緒方洪庵」や「吉田松陰」や「中江藤樹」など、多くの弟子を残した教育者も多数いました。このときの教育の質の高さが、後の明治維新を支えたともいえます。
明治時代に入ると「学制」が公布されました。このときの国のスローガンは、「富国強兵」であり、ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国にも負けない強い軍隊を作ることや、税金を集めて国の制度を整えるといったことでした。
もちろん人々のために尽くそうとした多くの優秀な研究者も数多く出ましたし、アジアの植民地支配を進める欧米列強から日本を守るためには仕方ないところもあったと思いますが、このときの教育の目的は、「子どもを幸せに」ではなく、「国家を支える人」を育てることではなかったでしょうか。