第二章 釣りもアレも人間は新奇好き

ぢ主にオカマはつとまらぬ

カキの類もオスになったりメスになったりするそうである。
魚類では釣り師に人気のある、「チヌ・黒鯛」がそうである。

生後一年ぐらいまでは全てオスであるが、それを過ぎると両性となり(三年~五年)経過するとオス、メスに分かれて一対一の等比となる。したがって夏場、数釣りを楽しむころのチヌは両性のチヌである。

両性とは雌雄同体のことで、体内に雌雄両方の器官を有していることである。卵子を作る卵巣があり、精子を作る精嚢(せいのう)がある。

こう聞けば、自分だけで繁殖活動ができると錯覚するが、それは不可能で、必ず他の個体と生殖を行う。これらの生物はメスもなければオスもない、お互いがその役目を果たしている。

釣り餌の「ミミズ」、木の葉にいる「カタツムリ」「ウミウシやアメフラシ」などが代表選手である。

オイラは鳴門でメバルの夜釣りをしている時、アメフラシの交尾を観察したことがある。

六月、漁港の船溜まりの突堤にある明るい常夜灯の下だった。三〇センチもある大きなアメフラシがまぐわっていた。二匹は巴に組んで渦(うず)を巻くようにゆったりと回っていた。よく見ると双方とも自分の器官を相手の体内に差し込んでいる。やや斜めに向かい合わせているから、その部分がよく見える。

柔らかい体を動かしながら、しっかりと結合している。水の中でぬるぬるとしているだろう二匹の静かな動きは、えも言われぬ妖艶(ようえん)な一瞬を醸かもし出していた。