第2章 障害のある子どもの理解

⑶自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症の歴史

わが国でも、昭和35(1960)年代から自閉症への関心は急速に高まり、自閉症の原因は親とのスキンシップ欠如による心因性疾患と考えられ、ベッテルハイムの影響により母親の養育態度に問題があるとされていました。

昭和45(1970)年代になると、新しい世代の児童精神科医たちは、より確実で科学的な方法を自閉症の診断に求めるようになりました。そして、自閉症は心の障害ではなく、むしろ脳の障害としてとらえはじめたのです。

1978(昭和53)年にイギリスの精神科医のM・ラターは、自閉症の本態は脳の中枢神経系に器質的・機能的な障害があり、そのために言語・認知障害が生じているとし、自閉症の観察可能な次の4つの主要な特徴を発表しました。それは、

①2歳半までに症状が始まること
②対人的発達の障害、コミュニケーションの障害
③物を一列に並べ、変化に抵抗する
④ステレオタイプな身体運動など通常は見られない行動がある、

ということです。以後、その見解は研究者らに支持され、認知・言語・感情障害など、脳の情報処理系の障害であると考えられるようになりました。

それまで自閉症は精神的問題として考えられていましたので、治療法としては「受容」することを中心とした非指示的遊戯療法の影響を受け、遊戯療法を中心に取り組まれましたが、受容するだけでは社会適応での効果はあがらないという行動心理学の研究者からの批判が多くなってきました。