不安はあったのですが、そこまで強く言われてはと、彼の言う通りの待ち合わせ時間にしたのです。そして、万が一、喫茶店が見つからない場合は、出発ロビーで落ち合うことに決まりました。当日、上司が第2ターミナルに着くと、彼の言う喫茶店は見つからないどころか存在していませんでした。
「きちんと調べておけよ」と思いながらも、約束通り、出発ロビーの椅子で待ちながら彼にメールしましたが、なかなか返答が来ません。出発予定時刻の15分前。依然として彼の姿が見当たりません。
しびれを切らして、上司は手荷物検査に一人で向かいました。しかし、時すでに遅し。手荷物検査のところで入場は締め切られていたのです。
慌ててカウンターに向かうと、そこに駆け寄ってくる彼の姿がありました。上司はつい、「どこにいたんだ」と大声を出してしまいました。
すると彼は、「下で待っていました」と息を切らせながら答えました。その言葉に上司は絶句しました。喫茶店が見つからなかったら、出発ロビーで待ち合わせという約束を忘れていたのです。
「すいません」と彼はひたすら頭を下げ続けました。問い詰めると、彼は上司より早く空港に着いており、喫茶店がない状況を把握していたにも拘わらず、どう対処したらいいかわからなかったというのです。上司にメールしたと言いますが、古いメールアドレスだったせいか、上司の履歴には入っていませんでした。