2013年
2013年2月1日 痛風のトピックス
政権が交代し、景気も改善の兆しあり、何となく春が待ち遠しい気分になってきました。安倍晋三首相は私と同い年でありますが、同年の人の活躍には大いに刺激されるものがあります。
今月は痛風に関する話題です。痛風は体内に尿酸がたまる高尿酸血症が原因ですが、足の関節などに激しい痛みを生ずる関節炎が主な臨床症状であることから、関節炎を扱う「リウマチ性疾患」のひとつです。そのため私どもの膠原病リウマチ痛風センターには多くの痛風患者さんが受診されています。
痛風に関する最近のトピックスをいくつか。
1.痛風の遺伝的要因がかなり分かってきました。
尿酸を腎臓から尿中に排泄するタンパク質の働きが弱い人は尿酸の排泄が低下し、高尿酸血症から痛風になる場合が多いことが分かってきました。つまり、プリン体の取りすぎだけで痛風になるわけではなく、体質的な要素が強い、特にいくつかの遺伝子を持った人では尿酸が高くなり、痛風になりやすいことが分かりました。痛風は生活習慣病ですが、生活習慣だけで病気になるわけではないということです。
2.尿酸を下げる新しい薬剤ができています。
フェブキソスタットという新しい尿酸降下薬が2011年6月から市販されています。これは日本の製薬会社(帝人ファーマ)が開発した薬剤で、私と前所長の鎌谷直之先生が開発のアドバイスをしてきました。現在では世界中で使われていますが、効果が確実で、安全性も高い優れた薬剤です。尿酸値を下げる薬剤は数多くありませんが、治療の選択肢が増えたことで臨床の現場では歓迎されています。
3.欧米では痛風が大問題になっています。
日本は以前から健康診断で尿酸値を調べたり、痛風を発症していなくても尿酸値が著しく高い(9.0㎎/㎗以上)人では薬物治療を行ってきました。つまり高尿酸血症や痛風に対して前向きに取り組んできて、その結果として日本には重症の痛風はほとんどいません。
ところが、米国では過去30年間、痛風は忘れられた疾患として真剣に治療をしてこなかったのです。尿酸値が高いだけでは治療せず、よほど重症の痛風になって初めて治療するという状況でした。その結果として、米国には治療が難しい重症の痛風患者が多く、今になって大きな問題になっています。
今月の2013年2月16日(土)に、痛風に関する市民公開講座を開催いたします。
「痛風と高尿酸血症を予防する日常生活の知識」
日時:2013年2月16日(土)15~17時
場所:丸ビルホール(東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル7・8階)東京駅の丸の内口からすぐです。
私と当センター谷口敦夫教授、帝京大学薬学部金子希代子教授の3名が分かりやすく講演します。土曜日の夕方ですが、痛風や尿酸に関する知識を深めてみませんか?