「何中学かな?」
「○○中学です」
たいていのお子さんは「○○」と言うだけで中学の名前だけしか答えませんが、E君はきちんと中学までつけて答えます。
「E君はとても丁寧に喋るね、いい子だね。担任の先生は優しいかな、怖いかな?」
「あー◇□△子先生ですか、怒ると怖いです」
担任の名前をフルネームで答えます。正確に言わなくてもいいことまでしっかり述べるのも自閉スペクトラム症の特徴の一つです。
「お父さんとお母さんは?」
ここで、言葉をわざと省略してみました。
「なんですか?」
どちらが怖いのかを聞いたのですが、やはり、行間が、空気が読めていません。発達障がいのお子さんが苦手なことが多い分野です。
「お父さんとお母さんは、どっちが怖いですか?」
必然とこちらまで聞き方が丁寧になってしまいます。叩かれてはいないようですが、宿題をやらなかった時などは父親に怒られるようです。
話を進めていくと、どうやら自閉スペクトラム症に加え、不注意型のADHDもあるのではないかということがわかってきました。多動型は明らかな行動として見えるのですが、不注意型はなかなか見えないので気づかれにくく、小学校では、かなりの頻度で見過ごされます。
中学校くらいになると、同じADHDでも多動・衝動型で落ち着きのないお子さんより、不注意型で忘れ物の多いお子さんの方が目立ってきます。気が散り、集中できず、切り替えが下手で、指示に従えないという特徴のあるお子さんです。
E君もこのタイプで、集中ができないから宿題ができないと考えられます。言っても言うことを聞かないと、ADHDのお子さんにイライラして怒鳴る教師や親御さんも多くいます。