「まあ、経済界の親分が? 知らぬ存ぜぬじゃないのね。問題がどこにあるかよくわかっているのね。素晴らしいわ、そういう人がいるなんて。
わたし、あーいう人たちはまったくわかってないと思っていたから。それどころか、そういうことを仕向けた、そもそもの黒幕だと思っていたのよ」
「未希はなかなか手厳しいことを言うね。確かにそのものずばりだよ。だけどその人の提案に、周りがまったく耳を貸さない。
それどころか、言った本人の批判ばかりしているんだから、ぼくはそれを聞いたとき腹が立ったねえ。いったいこの世の中どうなっているのか。
批判している人間は、これが少子化を生み、日本を底なし沼に落とし込んでいるということに、なぜ気がつかないんだと思ってね。情けなかったよ。
今のような経済システムにした張本人だね。愚鈍だね。『ワーキングプア』を産み、どうしようもない格差が広がっているというのに。自分さえよければいいという、狭量な考えの人間が増えているんだよ。
多くの人が貧困で泣いているのにねえ。一握りの人間のために、無茶苦茶にされてー」
未希の鋭い論点に加勢を得て、圭吾は一気にしゃべりまくる。
「『おまえらぐだぐだ言ったって、すべては自己責任だろう!』って、虫けらみたいに人間を見ているんだからねえ」
未希の即座の返答が胸を打つ。
「そうね、あれだけ威勢のいい先生が、最後眉をひそめて、本当に悲しそうな顔をされるんだから、胸が詰まって何も言えなかったわ」
「悲惨な労働市場がずっとあったんだね。過去じゃない。今でもあるんだ……」
伏し目がちにぽつりと、静男がつぶやいた。
「やっぱり鋭いね、あの先生は。図星じゃないか。ぼくらが求めようとしていることがわかるんだ。弱者の気持ちがわかるんだよ」
「そうね。圭が本気になるのもわかるわ」
「今の日本の低迷状態、先進諸国のなかで、日本が一番賃金が低いことも、歴史を追って話してくれた。
今日の話はショックだったなあ。そうだったのか、そうなってるのかとストンと腹におさまって腑に落ちたよ」
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