秘密のバスルーム
かりんの部屋の前に大きな窓のある明るい8畳ほどのバスルームがありました。大きなバスタブが1個、ドアのないトイレが1個、洗面台が2個と洗濯物掛け、4人分の小物入れがありました。
内緒ごとをするのにうってつけの場所でした。
仲良しのドイツ人ベリンダとお買い物に行った時でした。
「かりん、見て、おいしそうなパイナップル。ずっと食べていないから食べたいなあ」
「ほんと、おいしそう」
カットフルーツなんていう便利なものはなかったので、ふたりでお金を出し合ってパイナップルを買いました。みんなに見つからないように食べるのに、とっておきの場所が広いバスルームでした。
鍵をかけてタイルの床に座り、小さいナイフでパイナップルを切るのに悪戦苦闘しました。そうして食べたパイナップルの味は甘くて最高でした。
そんなお気に入りのバスルームも時には不便なこともありました。中から鍵をかけられると自分の洗面道具が使えないのです。
ある時、なかなか鍵が開かなかったため、かりんはバンバンとドアをたたきました。
「誰?」
アメリカ人のクリステルの声が聞こえてきました。
「かりんよ」
すると鍵を開けてくれました。かりんが中に入るとまた鍵をかけました。
クリステルはトイレの続きをしました。お~外国人だ。
バスタブには同じ部屋のイギリス人ミランダが泡風呂に入っていました。なんだか深刻な雰囲気でした。
「どうしたの?」
かりんが尋ねると、ミランダが沈んだ声で話し始めました。
「パパの銀行口座のお金が空になったの。継母は自分の娘に財産を残すために宝石を沢山買ってるの」
「えっ? あなたを送ってきたブロンドの人はママではなかったの?」
そう言えば何となく会話が親子っぽくなかったことをかりんは思い出しました。
「でもパパは大丈夫と言っていた。もうじき仕事のお金が入るからって」
ミランダのパパは有名なミュージシャングループのプロデューサーらしい。しかし大丈夫ならば何で寮生活をしている16歳の娘に心配させる話をわざわざしなければならないのかとかりんは思いました。子供にも何でも話すのが外国人の教育なんでしょう。
3人の秘密も大きなバスルームが守ってくれました。