▲3▼ 痛みの教え――少年が出会った〝最初の壁〟
幼い頃、私は身体が弱かった。
走れば遅く、跳べば届かず、すぐに息が切れた。
悔しさに歯を食いしばり、涙をこらえた日も多かった。
そんな私を、父は決して甘やかさなかった。
むしろ、毎日のようにこう言った。
「二番じゃつまらん」
その言葉の意味を、当時の私は深くは理解していなかった。
けれど、不思議と嫌ではなかった。
むしろ、その言葉を背に受ける瞬間、父の背中が一回りも二回りも大きく見えた。田んぼから吹いてくる風の中、汗をぬぐいながら黙々と働く父の姿。
振り返らず、弱音も吐かず、ただ前に進むだけの背中。
「二番じゃつまらん」
あの言葉は、父が自分自身へ向けていた〝生き方の宣言〟でもあった。
農家の朝は早い。
乳牛の搾乳が終わると、次は父と一緒に昨日収穫した野菜を市場まで運んでいく。
当時は、一二五㏄のバイクにリヤカーを連結し、そこに野菜を山のように積み上げた。
私は、そのわずかな隙間にしがみつきながら市場まで揺られていったものだ。
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