【前回記事を読む】「百年健康住宅」のグループ創業者が語る“生き方の本質”──人生には、ある時ふと「もう戦わなくていい」と気づく瞬間がある。
第一章 黒髪の山里に生まれて
▲1▼ 誕生の秘話 ― 祐という字が決めた道
長崎県佐世保市黒髪町。
本家に両親が同居していた、木の香りのする家。
そこで私は、産婆さんの手で取り上げられた。
一九四九年八月。蝉しぐれが降りそそぐ、濃い夏のことだ。
まだ出産に医師が必ず立ち会う時代ではない。
産声が上がるかどうか。
母を取るか、子を取るか――
そんな極端な言葉が囁かれたという。
けれど、家族の誰にも、その問いに答えられなかった。
私は頭が大きかった。
産道を抜けられない。
帝王切開という選択肢もない時代、最後に決断したのは父だった。
鉗子(かんし)で挟んで引き出すしかない。
母にも、子にも危険は大きい。
母の命を守るためか、子をこの世に出すためか、その判断は、父の胸に深く刻まれたと思う。
ぎゅう、と骨に響くような金属音が残った。
私は、傷を負ってこの世に生まれた。